SF游歩道

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国立国会図書館所蔵のサンリオSF文庫のデジタル化について

先日、国立国会図書館所蔵のサンリオSF文庫の一部がデジタル化作業中のため利用できなくなっている旨をツイートしたところ、大変な反響と共に拡散された。

ここまで拡散されたのは私の想像を遥かに超えており、大変に言葉足らずなツイートになってしまっているので、この文章によって補足を行いたい。

 

 

要旨

 

一問一答

引用RTとかで見受けられた疑問に対する一問一答。

自宅でサンリオSF文庫の電子データが読めるようになる?

当面ならないと考えられる。サンリオSF文庫のうち、国立国会図書館が絶版であると認めた資料に関しては個人向けデジタル化資料送信サービスの対象となるが、確認等の手続には時間がかかる。確認作業が終了するまでは、国立国会図書館内からの閲覧のみに利用される。

あのサンリオSF文庫が読めるようになるかな?

国立国会図書館が絶版であることを確認し、かつ出版社等から申請のなかった資料に関しては、将来的に個人のデバイスからでも読めるようになる。ただ、現時点で復刊されているものも多いことに注意。読みたいあの本も、サンリオSF文庫復刊リストを確認すると意外と見つかるかも。

元資料は裁断される?

されない。国立国会図書館は原資料の保存を第一目的としており、資料が傷まないようにデジタル化される。

 

国立国会図書館電子図書館事業

国立国会図書館は、近年電子図書館機能の拡充に力を入れており、その取り組みの中に所蔵資料のデジタル化事業がある。資料のデジタル化には大きく2つの目的があり、ひとつは資料原本の保存、もうひとつは電子図書館サービスをはじめとした資料閲覧の利便性向上である。

特に後者については、2022年5月より個人向けデジタル化資料送信サービスの提供が開始されたことで一段と注目を集めている。

個人向けデジタル化資料送信サービス

個人向けデジタル化資料送信サービス(個人送信)とは、

国立国会図書館のデジタル化資料のうち、絶版等の理由で入手が困難なもの(*1)を、インターネットを通じてご自身の端末(パソコン、タブレット)等でご覧いただける(*2)サービスです。

*1:著作権者等の申出を受けて、3か月以内に入手困難な状態が解消する蓋然性が高いと当館が認めたものを除きます。
*2:このサービスでは、当面の間、印刷(プリントアウト)はできません。

利用可能な資料は図書館向けデジタル化資料送信サービスで利用可能な資料と同一であり、利用可能な資料にサンリオSF文庫は現状該当していない*1

2023年4月現在、サンリオSF文庫は個人向けデジタル資料送信サービスの対象である*2が、絶版資料(新刊書店で入手困難な資料)であるかどうかの確認作業および著作権者・出版社からの申立てがなかったことの確認作業を経て個人向け送信サービスに供されるため、電子化が済めば直ちに個人向け送信サービスで閲覧出来るようにはならない。

国立国会図書館デジタルコレクション

個人送信以外にも、著作権が既に切れている資料、著作権者の許可を得た資料については、国会図書館デジタルコレクションで自由に閲覧が可能となっている(インターネット公開)。しかし、既に電子化されているサンリオSF文庫コリン・ウィルスン『ラスプーチン』がそうであるように、サンリオSF文庫の作品はそのほとんどが著作権保護期間中であることから、大半の資料が館内公開限定あるいは個人向け送信サービスまでの利用に留まると考えられる。(著作権者からの許可を得られれば利用可能となるが、故人が多く、版元も存在しないため、交渉は困難であると考えられる)

 

付録:サンリオSF文庫の復刊状況

おまけとして、サンリオSF文庫に収録された作品の復刊状況について、スプレッドシートにまとめておいたので、リンクを置いておく。

サンリオSF文庫復刊状況リスト - Google スプレッドシート

余談だが、サンリオSF文庫の中で読んで得るものがある作品の大半は既に復刊されていて、現在でも新刊で入手可能なものが多い。

復刊されておらず、読む価値がある作品は以下の作品が挙げられるだろうか。

 

参考資料

[1] 『サンリオSF文庫総解説』、牧眞司大森望編、本の雑誌社、2014

[2] 「サンリオSF文庫の部屋」

[3] 国立国会図書館HP

 

*1:現在、図書分野では昭和43年(1968年)までに受け入れたものとなっており、78~87年刊行のサンリオSF文庫は該当しない。

*2:2023年4月現在、図書分野は昭和62年(1987年)受け入れ資料までが対象となっている。