SF游歩道

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告知:ハヤカワ文庫JA総解説PART3に参加しました

前々回前回に引き続き、10月25日発売のSFM2021年12月号のハヤカワ文庫JA総解説PART3に参加いたしました。

 

通巻1500冊到達を記念して行われるハヤカワ文庫JA総解説は、SFマガジンおよびミステリマガジン複数号に渡って行われる豪華企画。SFMのPART3はJA1001の籘真千歳スワロウテイル』からJA1500の『異常論文』まで収録。

担当作品はJA1062円城塔『後藤さんのこと』、JA1289日下三蔵編『日本SF傑作選』、JA1371草野原々『大進化どうぶつデスゲーム』『大絶滅恐竜タイムウォーズ』、JA1440伴名練編『日本SFの臨界点』の4点。今回も大物ばかりを任せていただき大変ありがたく思います。

ひとつ悔やむとすれば、『日本SF傑作選』の字数が足りなくて、各作家への思い入れを描く余裕がなくなってしまったこと。平井のウルフ・ガイとか、光瀬の『百億の昼と千億の夜』とか、長篇との関連性とかを収められなかったのは、単に技量不足として反省をするしかありません。

逆に、『後藤さんのこと』で内部観測というキーワードを示せたこと、円城塔作品における喪失と時間の関係を指摘出来たことは、非常に大きな一歩だったかなと。私の知る限り、円城塔と内部観測を明確に指摘した文章はこれまで存在しないので、批評的に重要な足跡になるかと思います。

そして、今回も若い書き手が参加しています。前回までの鯨井・空舟両氏に加えて、ミステリマガジンのJA総解説を担当していた鷲羽巧氏がSFMの方も担当。若者増量版です。

今回も短篇集から一作ずつ選ぶとするなら、「ガベージコレクション」、「地には平和を」、「ムーンシャイン」。ただの円城塔好きじゃねえかという話ではあるものの、日本SFの第一世代から第六世代まで、若い私の視点から紹介出来たことで、若い読者の方にも受け入れやすくなっているかと思います。

これにて超大型企画ハヤカワ文庫JA総解説は無事終了です。駆け出しの身に、こんなにも重要な作品ばかりを割り振っていただけたこと、大変感謝しています。日本SF史を概観する資料として、そしてこの時代における作品受容の史料として永く使われることを期待します。