SF游歩道

語ろう、感電するほどのSFを!

近況整理

大変に言及したくないことではあるが、これについて整理しないことにはなにも手につかない。私、下村思游が東北大SF・推理研を退会した経緯について書く。

 

退会の経緯

2020年1月、SF・推理研1、2年の総意だとして、推理研の3年生から部室への出入り禁止と、運営業務から手を引く旨を直接伝えられた。これは、SF・推理研というサークルからの事実上の退会勧告である。

この勧告が正式な手続きにのっとって、私も出席する場でサークルの意思として定められたものならばこちらも受け入れるのだが、そうではなかった。SF・推理研の同期やSF研3年など、親しい会員に聞いたところ、そのような意思決定がされたことを誰も把握していなかった。要は、私と親しい人間を省いた一部集団が、水面下で一方的に追放を決定していたということだ。

私はこの勧告を実効性のないものとして一旦無視し、年度末まで、私の手元にあった金銭の絡む必要業務の引き継ぎを行った。そして、新年度の4月25日に私からSF・推理研に対して退会を申し出て、遡って2020年3月末日づけで退会した。

 

私がこのサークルを辞めたのは、第一に非民主的手続きによって構成員の追放が行われるような集団に属していたくなかったこと、第二に私を集団で攻撃するような人間がのさばる組織に属していたくなかったこと、第三に私がいることでサークルの雰囲気が悪くなっていたこと、第四にもはや私にとって八方塞がりであると判断したこと、第五にもともと大学院進学後はサークルでの活動を辞めようと考えていたこと、これら五点による。

第一の理由については、もはや論ずる必要がない。

第二の理由については、ひどく世俗的ではあるが、これも私個人にとっては大きな問題である。

第三の理由については、SF・推理研への私からの最後の貢献である。私が在籍していることによって、新入生が入らなくなる事態を避けたかった。

第四の理由については、サークルを生かすために必死に仕事を続け、外部への発信や渉外を一手に担っていた私をこんな形で追放するようでは、もはや私によるサークルの立て直しは不可能であると考えた。

第五の理由については、大学入学以来4年もほぼ1人でSF研を切り盛りしてきて、いい加減SF研を存続させることが苦痛になっていたのでちょうどいい手切れのきっかけになったと感じている。

 

もちろん、全員が全員私を追放しようとしていたわけではなく、SF研会員含め、大半は私をひきとめてくれた。しかし、私の心からはすっぽりとやる気が抜け落ち、無理をして残る気力もなく、提案された籍だけ残すという消極的解決ではなく退会という積極的離別の道を選ぶに至った。

現状、私は私を追放した主犯格に対して大変な怒りを抱えている。誰なのかも何人いるのかもわからないが、退会勧告を直接言い渡した者を含め、その後一度も会うことはなく、また連絡も通じない状態が続いた。せめて、退会する前にその理由をしっかりと言い渡して欲しかったものだが、卑怯にもみな言い逃げして雲隠れしたのでそれが果たされることはなかった。

一方で、逆手にとれば、私を追放した者たちもまたサークルからは遠ざかっているので、現在のSF・推理研の構成員は(私から見て)浄化されていると言って差し支えない状態にある。もし東北大SF・推理研の人がこれを見ているなら、私が楽しむことが出来なかった、同好の士が集まるサークルの貴重な楽しさを、存分に味わってほしい。

 

以上、私の立場から見たSF・推理研からの退会の経緯である。無論、SF・推理研側から見た退会に至るまでの経緯は大きく異なることであろうと予想されるが、両者の相違に対しては一切反論せず、SF・推理研側の見解が事実であると宣言する。ただし、人格否定や飲酒の強要などの法に触れる行為は一切行っていないことを主張する*1

 

私の非(追記:2020/05/22)

まず、この記事の公開に際して私の非についてその一切を省いたこと。これは私の意図したものであり、私の人間性如実に示している。なんの非もなくサークルから退会を勧められることなどありえず、これは自らの非を隠して保身に走り、他方を悪様に書き立てたことに起因する。以下、私の非について追記する。

下級生に対して強く当たったのは事実。ただし、それは去年の春から続く、合宿の不成立(予約担当の盛大なサボり)や学祭担当の会合すっぽかし、サークル予算の不透明な使用、業務引継ぎの放棄などが積み重なった最終的な結果だというのも事実。だれかが怒らなければ動かないような組織になっていたことと、怒るような人間が私だけだったことで、双方ストレスが溜まっていき、限界を迎えて起こったのがこの退会勧告だったのだと思う。この原因となっていたのは、執行代であるB2とその直上のB3との間のコミュニケーション不足であったが、ここでB3に対応するよう促すのではなく、B4である私たち(特に私)がB2に直接働きかけるという悪手をとったことも過ちであった。これに加えて、B2の対応のまずさ(話を聞くだけ聞いてやらない、返信しない、など)が重なって私以外のB4全員がB2への対応を諦め、最終的に私だけが対応していたということも、双方の不満が集中する原因となったと考えている。

そして専制化していたこと。要は、東北大SF研はほぼワンマンだった。入会当時、幽霊部員を除いてSF研にはM2が1人、B2が1人、そしてB1の私ともう1人(中途退会)が居ただけで、この年の活動はほとんどなく、翌年執行代となった私が新入生を確保しなければ正規構成員の不足により廃部となる状況となっていた。結果、無事新入生2人(と中途入会のB2を2人)を確保して、翌々年も新入生を確保出来たのだが、人手不足も相まってワンマン時代のまま私が引き続き運営業務に携わり、それが常態化していた。そもそも入学当時のM2から私への引き継ぎが全くなされず、手探りでGmailwikiTwitterクラウドストレージなどの復旧を行ってそのまま管理を続けており、それに伴って渉外もすべて私に一任されていた。私から後輩への引継ぎはされており、B2以上はすべて対応出来る体制が整えられていたが、結果として応答が一番早く、一番仕事をこなしていたのは私であり、私も他の人間もそれを不思議なことだと考えずにいた。これによって、私は私がサークルを支えていると錯覚するに至り、他の人間も私が仕事をするからそれでいいやというようになっていった。

さらに、SFについても専制化されていたと言える。大学からSFを読みはじめた会員が圧倒的に多い中、昔からSFに触れていた私の方が知識面ではるかに優位であり、内容面と実務面を掌握していた私に、あらゆる面で反論しづらい空気があったことは否定出来ない。(ただ、SF方面では3回論戦すれば2回は負けているというような感じであった。)

院生になっても居座ろうとは考えていなかった。が、居座るかように見えたというのは正しく、これに対する反発は自然であり、サークルとして当然なされなければならない作用であると思う。これだけサークルを私物化してきて、自分の活動のために利用してきたことは、すべて正当化出来ない所業である。追放という処置自体に反論は一切ない。

 

結論、今回の追放においては私に多大な非がある。私が追放されなければならなかったことは紛れもない事実である。これに異論はない。論点は、サークルとして正規の意思決定プロセスを経ずに退会勧告が行われたこと、この一点のみである。

 

合わせて

私の退会に前後して、まずSF研同期の壁石九龍が3月半ばの時点で退会し、推理研同期の本淵洋も5月現在半ば退会状態にある。これによって院進組が全員退会したため、現M1世代が卒業・退会によって全員SF・推理研から事実上離れた。すなわち、東北大SF・推理研の活動を事務的・内容的に支えてきた中心世代が全員いなくなった。

 

今後について

東北大SF・推理研を退会して、昨年夏に立ち上げていた『科幻万華鏡』というウェブジンに活動の場を完全に移した。東北大SF研と背反するような存在ではなく、まったく独立して活動を続けることになる。

そもそも、SF研を辞めたからといって、私がSF活動を辞めるはずがない。むしろ、死にかけのSF研をなんとしても次に繋がなければならないという枷が外れたことで、大変身軽に活動出来るようになった。

私が東北大SF研の庇を借りて行っていた中国SFの翻訳やVtuberもこのまま継続するつもりであり、SF研で行っていた対外的活動で『科幻万華鏡』でやらないことといえば、SF・推理研の機関誌の刊行だけである。

なお、この『科幻万華鏡』はもともと壁石+下村の連名で立ち上げた媒体であり、本淵・天津が既に記事を書いていて、さらに春尋・戸山も参加している媒体なので、もともとの東北大SF研中心人物の大半が参加していることになる。こちらの活動に、引き続き乞うご期待。

 

弱音

正直、東北大SF研をまさかこんな形で辞めることになるとは思っていなかった。やり残したことは多く、多くの成果を中途で丸ごと投げ捨てる結果になった。心身も大きく疲弊し、退会後しばらく経ってもずっと心の整理をつけられず、こんな文章を夜中に書いている。こんなことになるなら、SF研を立て直さなければよかった。

東北大SF研を辞めた後、京大SF研が新入会員を募集しているのを見かけて、一時は本気で入会しようと考えていた。だが、ここで活動の場所を移した場合、東北大SF研に多大な迷惑がかかると考えてやめた。

 

二度と私から進んでファンサークルに参加することはない。やるとすれば、『科幻万華鏡』のように気心の知れた少数の仲間たちだけで楽しくやるか、ファン活動や同人活動でない、責任関係のしっかりした商業活動をやるかということに限られる。

とりあえず、『科幻万華鏡』という場を事前に作っておいてよかった。上にも書いたが、東北大SF研第4期*2の主要人物(下村、壁石、本淵、戸山、春尋、天津、卜部)は全員こちらに合流済みなので、この『科幻万華鏡』を旧来の東北大SF研だと考えてもらって差し支えない。

 

いろいろな社会的余波や本業の忙しさに呑まれて身動きがとれなくなってしまっているが、いずれにしても私は元気で、まだ純粋にSFを楽しむ余裕はないけれども、SFが好きな心は変わっていない。

*1:むしろ、私が人格否定を受けた。デカくて居るだけで威圧感があって怖いとの苦情があるので部室に来るな、など。

*2:私と壁石の2人で自称しているもの。曽根卓らの自称した京大SF研第4期への対抗心から。歴史的には、設立後すぐに潰れた幻の第一次東北大SF研(76)を1期として、現在の東北大SF研の直接の源流である第2期(78~02、今村徹・円城塔・勝山海百合ら)、推理研との合併を経た第3期(02~16)、そして私たちのいた第4期(16~19)に分ける。