SF游歩道

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東北大SF研の10冊(令和元年8月)

未来の東北大SF研会員、そして未来のSF読者に向け、SF研内で少しばかり相談をし、10冊の本を選んだ。世間はこれから夏休み、この文章をSFの面白さに触れる参考にしていただけたらと思う。

別にこれらを読んでいなければSF研には入れないわけでは決してない。新入生に対して何十回と同じ話をしてきて、流石に飽きてきたため文章としてまとめた次第である。

基本的に、東北大SF研で新入生に対して読んでもらっている順番の通りに挙げていく。作品に対する説明は省いた。

 

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

 
ようこそ地球さん (新潮文庫)

ようこそ地球さん (新潮文庫)

 

現在の東北大SF研でもっとも特徴的なのが、新入生に対して星新一のこの2冊を渡して読んでもらうというところにあるだろう。

とりあえず最初に『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』を読んでもらい、また次に会った時に話をして、作品の感想を聞いたりどのような作品が好きかという話をしたりすることを通じて、薦める作品の方向性を決めていくのがこの2冊の役割。

はじめて読む人で面白くなかった、という人はいなかったし、たとえ読んだことがあったとしても、この2冊を読み返して新たな気づきがなかった、という人はこれまで1人としていなかった。

東北大SF研は、東北大推理研と合併して東北大SF・推理研というひとつの大きなサークルを構成しているため、全体としてはSFをよく読む人たちと、ミステリをよく読む人たちの大きく分けて2通りの人がいる。 そのどちらをも対象とするのがこれまでに挙げた3冊である。

この作品なら、本が好きな人ならだれでも好きだろう。無論、東北大SF研では絶大な人気を誇る。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

 
しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

 

この2冊もワンセット的な扱い。「SF読むならチャン、イーガン」という金言が伝わっている。チャンはほかに候補がないが、イーガンは「ルミナス」の『ひとりっ子』、「ワンの絨毯」の『祈りの海』と差し替えることも考えられる。これに関しては、読み手側の嗜好によって変わってくるところだろう。 

文字渦

文字渦

 

東北大SF研で円城塔は避けられまい。円城塔を読んでくれればそれでいいのだが、『Self-Reference ENGINE』と悩んで『文字渦』にした。反応は上々。 

円城塔を読んだらレムにつなげていきたい。『完全なる真空』『虚数』とも迷ったが、劉慈欣「三体」への接続を考えて本作に。

名前だけ有名で読まれていないこの本。最近ではもはや『エヴァ』すら知らず、本作も知らずという人ばかりなので影響力の減退が強く示唆されている。「101号線の決闘」のキャッチ―さが大好評で、表題作ももちろん人気。 

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

 

これについても円城塔、レムからつなげていきたい。レム『虚数』『完全なる真空』を挙げなかったのはボルヘスを挙げるつもりだったからというのが真相。ただ、中国SFで劉慈欣「円」と同水準の作品が2,3作も収録された短篇集などが刊行されれば、それと交代するだろう。

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

 

最後はギブスン。「ニューロマンサー」やスターリング『蟬の女王』、そして中国SFとで悩んだが、まだまだ中国SFが洗練されていないことと、ギブスンなしのサイバーパンクなどありえないこと、そして「ガーンズバック連続体」と「冬のマーケット」を収録していることを考慮して『クローム襲撃』を選んだ。

 

ここに挙げた10冊には、基本的に説明がなくても楽しめて、バランスよく取りそろえたつもりだ。

欲を言えば、ティプトリーの『愛はさだめ、さだめは死』やオールディスの『地球の長い午後』、ディックの『マイノリティ・リポート』なども入れたかったがその余地がなかった。国内作家も小松左京筒井康隆はじめまるごとごっそり落ちている。

10冊だけでSFのすべてを概観することは到底不可能だ。そのうえで、この文章を読書の参考にしてもらえればと思う。

 

 

 

 

なぜこのような文章を書いたか。率直に言えば、京大SF研における同様の記事を目にしたからである。要は、自分たちも選んで楽しもうという魂胆だ。

clementiae.hatenablog.com

結果、チャン『あなたの人生の物語』、イーガン『しあわせの理由』、エリスン世界の中心で愛を叫んだけもの』の3冊が一致した。比較すると、一致していない作品群から風土の明確な違いというものを確認出来て面白い。