SF游歩道

語ろう、感電するほどのSFを!

反『君の名は。』としての『天気の子』試論

新海誠監督の新作『天気の子』を公開初日に鑑賞し、面白くなかったと感じたし非常に疑問点が多かったのでこの文章を書くことで整理したい。

 

前作『君の名は。』は、物語の構造とその論理性、そして“なぜその物語を物語らなければならないのか”という問題に対してその物語の中で回答を示した自己言及性において、自分の理想とする完璧な作品であった。

前作の成功が完全に論理的に導かれた必然的なものであり、かつこの物語の完成度を超えることは論理的に不可能であると理解していたので、今回の『天気の子』でどのような物語を展開するのか非常に気になっていた。

 

結論、本作は『君の名は。』の逆の物語構造を忠実に行った作品である。両作でなにが対立しているのかということを、整理しながらひとつひとつ見ていきたい。

続きを読む

映画『君の名は。』の過小評価について

2016年夏に公開され、まさに社会現象とも言える一大ムーヴメントを巻き起こし、日本国内で250億円以上、国外で3.5億ドル以上の興行収入を得た映画『君の名は。』。興行成績が示す通り、国内外で高い評価を受けており、2018年の正月に地上波で初放送された際も、ネット中がお祭り騒ぎになるほどの人気ぶりであった。

この作品の成功は、『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』などで既に一定の評価を得ていた新海誠監督の評価をさらに高めた。

私はこの作品が一定の評価を受けていることを十分に理解しているつもりであるし、確かに『君の名は。』に多少の難点があることは認めている。そのうえで、私は『君の名は。』が未だに過小評価されていると感じている。

この作品は、現在の評価よりもさらに高く評価されるべき作品なのである。

続きを読む