SF游歩道

語ろう、感電するほどのSFを!

東北大SF研の10冊(令和元年8月)

未来の東北大SF研会員、そして未来のSF読者に向け、SF研内で少しばかり相談をし、10冊の本を選んだ。世間はこれから夏休み、この文章をSFの面白さに触れる参考にしていただけたらと思う。 別にこれらを読んでいなければSF研には入れないわけでは…

反『君の名は。』としての『天気の子』試論

新海誠監督の新作『天気の子』を公開初日に鑑賞し、面白くなかったと感じたし非常に疑問点が多かったのでこの文章を書くことで整理したい。 前作『君の名は。』は、物語の構造とその論理性、そして“なぜその物語を物語らなければならないのか”という問題に対…

2019年上半期の読書整理記

平成が終わり、令和が始まった2019年。新しい時代の訪れとともに読んだ本を整理し、大学生活最後の半年に繋げていこうと思う。 下半期のベスト10 1.「ディアスポラ」(グレッグ・イーガン/山岸真、ハヤカワ文庫SF) ディアスポラ (ハヤカワ文庫 S…

VRのSF性に関するメモ

SF VR

VR技術をSFファンとして体験し、そのSF性について重要な発見をいくつかしているので、その感動を忘れないうちに記録しておくことにした。 あくまでメモ程度であるので整理はされていない。とにかくこの発見を記録しておくことが最優先事項であると判断…

いちSFファンによるVRchat体験記

SF VR

先日後輩宅でVRChatを体験してきた。ものすごく面白かった。 言葉を失っている。 かつてSFが描いた世界が、目の前にあった。VRChatを体験していたその間、私は、まぎれもなくSFだった。 あまりの衝撃に、ずっと整理できないでいる。この体験記を読む方は…

ブログ開設1周年の反省、今後の目標、その他よしなしごと

気がつけばこのブログを開設して1年が経っていた。 もともと継続的に更新するつもりだったとはいえ、1年の間にひとつひとつの記事が質・量ともに加速度的に重さを増していき、記事ひとつで1万字を超えることが珍しくなくなってしまった。 まあ、自分が楽…

流行に先んずること40年以上、悲劇(?)の中華SF――「猫城記」(老舎、サンリオSF文庫)

書籍情報 作者:老舎 訳者:稲葉昭二 出版社:サンリオ 形態:長篇小説 書影:HP「サンリオSF文庫の部屋」さまより引用 解説・感想 サンリオSF文庫紹介の第二弾。老舎は中国の作家ということで、この「猫城記」は今流行の中華SFということになる。流石はサ…

東北大SF・推理研 コミックマーケット95参加レポート

SF

平成最後のコミケとなるコミックマーケット95の3日目(2018年12月31日)に、「東北大学SF研究会」として初めてサークル参加をし、東北大SF・推理研の機関誌「九龍」第2号を頒布した。会誌制作から頒布当日までの体験をここに記録しておくの…

2018年下半期の読書整理記

また半年が過ぎ去り、2018年が終わる。平成最後の年に向けて、下半期に読んだ本を整理したいと思う。 下半期のベスト10 1.「文字渦」(円城塔、新潮社) 間違いなくこの作品が下半期のベスト。年間を通してもベスト、というかこれまで読んできた中で…

円城塔試論Ⅰ「円城塔の自己言及性とSF性」

私は円城塔のファンであり、ここしばらく円城塔とSFと物理と文学のことしか考えていない程度にはファンである。そうして部室などで円城塔の面白さを他人に語りまくることを通じて、円城塔の作品を読むことにおける重要な要素をようやく整理することが出来…

文字についての謎を文字で明かす、円城塔の最高傑作――「文字渦」(円城塔、新潮社)

書籍情報 作者:円城塔 出版社:新潮社 形態:単行本 文字渦 作者: 円城塔 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/07/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 収録作品 『文字渦』 『緑字』 『闘字』 『梅枝』 『新字』 『微字』 『種字』 『誤字』…

告知:東北大学SF・推理小説研究会機関誌「九龍」第2号

本日やっと原稿が完成したので、収録内容を紹介していきたいと思います。 本誌は2018年12月31日に開催されるコミックマーケット95の3日目、K24-bにて頒布します。(価格は現在未定)316頁に及ぶとんでもない機関誌となっております。 年明け以降に通販を行…

未訳SF紹介Ⅱ『偃師伝説』(潘海天)

書籍情報 作者:潘海天 形態:短篇小説 あらすじ 周の穆王は、笑顔を見せない盛姫の笑顔を引き出すために、国の内外を問わず芸に覚えのある芸人や俳優の類を無数に呼び寄せた。しかし、どの芸人も盛姫の笑顔を引き出すことは出来ず、穆王は失敗した芸人を次…

星新一研究Ⅰ「『殉教』の初出版と文庫版との比較」

導入 方法 結果 考察 今後の展望 結論 個人的な作品論Ⅰ 個人的な作品論Ⅱ 導入 星新一は、日本人ならば読んだことがない人のいないほど広く親しまれ、愛されてきた作家だと言える。 このように星新一の作品が時代を超えて愛され続ける理由として、星作品に特…

未訳SF紹介Ⅰ『Binti』(Nnedi Okorafor)

書籍情報 作者:Nnedi Okorafor 出版社:Tor.com Book 形態:Novella(中長篇小説) Binti 作者: Nnedi Okorafor 出版社/メーカー: Tor.com 発売日: 2015/09/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る あらすじ 主人公ビンティ(Binti)はヒンバ族…

SFが読みたいという初心者に薦めるための作品リスト

前回紹介した「SFが読みたいという初心者に薦めるための星新一作品3ステップ」を適切に行えば、かなりの確率でSFに対して興味をもってもらえることだろう。 しかし、せっかく興味をもってもらえても、次に薦めるSFが円城塔や酉島伝法であったら、これまたげ…

SFが読みたいという初心者に薦めるための星新一作品3ステップ

SFが読みたいという初心者に、適切に作品を紹介するのは中々難しい。 そこで本が嫌いな人でも読める星新一の作品を使って、適切に各種SF作品への道筋をつける方法を考案したので、ぜひ参考にしていただきたい。 今回紹介する方法は、タイトルにもあった通り…

中国SF研究Ⅰ「『科幻世界』巻末の翻訳SFに関する調査」

中国の有名SF月刊誌「科幻世界」の巻末には、同社の販売するSF単行本の通販カタログが2頁分掲載されている。 国内(中国)SFを先頭に、日本、アメリカ、カナダなどの国外翻訳SFが一覧形式で掲載されているため、この頁に登場する作家・作品を確認すれば中国…

神保町SF古書店紹介

世界最大の古本屋街、神田神保町。本好きにとっての憧れではあるものの、すこし寄り付き難い街。 SFに興味はあるけど神保町の古書店に行くには抵抗感がある、そんなひとでも安心して古書店巡りを楽しめるように、神保町でSFを取り扱う主な古書店を紹介する。…

夏におすすめな名作SF小説15選

まだ7月だというのに、厳しい暑さが続く毎日。 そんな暑さを忘れて没頭できるような、夏におすすめのSFを紹介する。 夏篇 国内篇 『暑さ』(星新一、新潮文庫「ボッコちゃん」収録) 『睡魔のいる夏』(筒井康隆、角川文庫「佇むひと リリカル短篇集」他収…

2018年上半期の読書整理記

今週のお題「2018年上半期」 今年も早半年が過ぎてしまった。そこでこの上半期で読んだ本を整理し、下半期へと繋げていこうと思う。 上半期のベスト10 1.『万物理論』(グレッグ・イーガン/山岸真、創元SF文庫) 上半期でダントツ。これぞSFといった感…

難解で知られる芥川賞受賞作家の、割と分かりやすい作品集━━「バナナ剝きには最適の日々」(円城塔、ハヤカワ文庫JA)

書籍情報 作者:円城塔 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫JA) 形態:短篇小説集 バナナ剝きには最適の日々 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 円城塔 出版社: 早川書房 発売日: 2014/03/07 メディア: 文庫本 この商品を含むブログ (18件) を見る 収録作品 『パラダイス…

『なろう批判を批判する!』への批判試論

小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿された『なろう批判を批判する!』という文章が話題を集めている。 『なろう批判を批判する!』風倉@こぴーらいたhttps://ncode.syosetu.com/n8479er/ 「小説家になろう」といえば、俗にいう「なろう小説」などのフ…

東西の短篇の名手の奇跡のコラボ━━「さあ、気ちがいになりなさい」(フレドリック・ブラウン/星新一、ハヤカワ文庫SF)

書籍情報 作者:フレドリック・ブラウン 訳者:星新一 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫SF) 形態:短篇小説集 さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF) 作者: フレドリックブラウン,星新一 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/10/21 メディア: 文…

要素マシマシ、カオスだけど意外と予測は当たっているディストピアSF━━『2018年キング・コング・ブルース』(サム・J・ルンドヴァル、サンリオSF文庫)

書籍情報 作者:サム・J・ルンドヴァル 訳者:汀一弘 出版社:サンリオ 形態:長篇小説 書影:HP「サンリオSF文庫の部屋」さまより引用 解説・感想 サンリオSF文庫紹介の第一弾。作者ルンドヴァルはスウェーデン人。ただでさえキワモノが多いサンリオSF文…

現代のラノベの原点はすべてここにあった!?━━『時をかける少女』(筒井康隆、角川文庫)

書籍情報 作者:筒井康隆 出版社:KADOKAWA(角川文庫) 形態:短篇小説集 時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫) 作者: 筒井康隆 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2006/05/25 メディア: 文庫本 購入: 12人 クリック: 88回 この商品を含むブログ (325件) …

日本SFの先駆け、時代の香り漂う傑作選━━「火葬国風景」(海野十三、創元推理文庫)

書籍情報 作者:海野十三 編者:日下三蔵 出版社:東京創元社(創元推理文庫) 形態:短篇小説集 火葬国風景 (創元推理文庫) 作者: 海野十三,日下三蔵 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/09/12 メディア: 文庫本 この商品を含むブログ (4件) を見る …

映画『君の名は。』の過小評価について

2016年夏に公開され、まさに社会現象とも言える一大ムーヴメントを巻き起こし、日本国内で250億円以上、国外で3.5億ドル以上の興行収入を得た映画『君の名は。』。興行成績が示す通り、国内外で高い評価を受けており、2018年の正月に地上波で…

<文豪>筒井康隆の原点は全て初期作品にある━━「日本SF傑作選1 筒井康隆」(筒井康隆、ハヤカワ文庫JA)

書籍情報 作者:筒井康隆 編者:日下三蔵 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫JA) 形態:短篇小説集 日本SF傑作選1 筒井康隆 マグロマル/トラブル (ハヤカワ文庫JA) 作者: 筒井康隆,日下三蔵 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/08/08 メディア: 文庫本 こ…

日本SF界の爆心地・草野原々の驚異の処女作品集━━「最後にして最初のアイドル」(草野原々、ハヤカワ文庫JA)

書誌情報 作者:草野原々 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫JA) 形態:中短編小説集 最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA) 作者: 草野原々 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2018/01/24 メディア: 文庫本 この商品を含むブログ (1件) を見る 収録作品…